皆さん泳ぎは得意ですか?
そうですか。←
私は水泳は苦手です。
小学生の頃、プールでクロールしていた私を見かけた姉が
「夕子、今日プールで溺れてたでしょ」
という位には苦手です。
大人になってからはもう少し落ち着いて泳げてるはずだと思うけども…
でも海では潜ったり泳いだり割と平気です。
度々登場する前西原父との思い出を少しばかり。
父は色んな仕事をしていたようですが、一時期船に乗っていました。
遠洋漁業とかいうやつですね。
立派な漁師時代のモノクロ写真を拝見しますと、マジでこれ誰ですか?っていう位髪も髭も伸放題。上半身裸にデニム。ティアドロップの色濃いサングラスと白い歯が光る海の男でした。
海で生活していただけあって、父は泳ぎが得意。
海で遊んでいた観光客(若い女子グループ)のビーチボールが流されていったのを「おじさんに任せなさい!!」と、数百メートル沖の方まで泳いで取りに行き戻ってきたことがあった。
もちろんライフジャケットとかそんなもん無し。
子供ながらに沖に向かって小さくなっていく父の姿を見て不安でたまらなくなり、じっと見つめていたのを覚えている。
なんなく戻ってきて、観光客(若い女子グループ)からの歓声に満面の笑みで応えていたのも覚えている。
そんな硬派な海の男でもある前西原父は、子供には泳げるようになって欲しいという信念があったわけです。多分。
そんな父の洗礼を受けたのは多分前西原少女5歳くらい。
当時、すでに海の男を引退し働いていた会社の社員さんやバイトさんみんなで海に遊びに行った。
宮古島ではメジャーな前浜ビーチ。
端っこのほうに桟橋があるのだけれど、その先端側の水深は多分3mはあったかと。
参考手描き画像
私はまだちびっこなので、砂浜側でちゃぷちゃぷ遊びますよ。
穏やかで微笑ましい休日のワンシーンですよ。
どんな流れだったかは覚えていないんだけど、父が桟橋の上に私を連れていき笑顔でこう言うのだ。
「ここから飛び込んでみるか!!」
一気に体がこわばる前西原少女
「え?お父さん、なにいってんの??え??」
父の体にしがみついて必死に抵抗する娘に
「大丈夫!お父さんもすぐ海入ってつかまえるから!」
そういう問題じゃない。
父がいるから海入っても大丈夫みたいな安心感はあれど、さすがに自分の背丈をゆうに超える深さと分かっていて飛び込めるほどアホじゃないし、それを危険と教えたのは紛れもなく父のはずだ。
一体どうした。どんな心境の変化だ。娘が嫌いになったのか。
女の子だぞ。5歳だぞ。娘だぞ。
―お父さんに海に落とされる!!!!-
緊張と恐怖で泣きべその前西原少女5歳。
抵抗もむなしく、軽々と両脇を抱えられ、小さな体は父によって前後に揺らされ始める。
少し遠くに飛ばすつもりだ。なんということだ。鬼か。
本気で?落とすの??本気で??(本気と書いてマジと読むタイプね)
「「いーち、にーの…!」」
周囲の大人たちは声を揃えて一緒にはやし立て、誰も助けてくれない。鬼か。
「「さーん!!」」
前西原少女の体が、父の両手から放たれる。
快晴の青空の下、透明度抜群の美しい宮古島の海へと体は吸い込まれていく。
すっぽりと海に入った途端、周りの音が一気に遠くなる。
視界はぼんやりだけど、きれいな海のおかげで結構よく見えた。
両足がやわらかい砂に触れて、無意識に上を見上げる。
両手を伸ばしても届かない、頭上の水面はキラキラと光っている。
習性なのか、本能なのか、反射的に両足で力いっぱい砂地を蹴りながら、両手で水をかいた。
無意識に止めていた呼吸の苦しさをこらえつつ、なんとか自力で浮上。
前西原少女5歳、海での泳ぎを体得した瞬間。。。
とはいえ、瀕死で水面に顔を出した海坊主のようだったと思う。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの前西原海坊主を、約束通りいつの間にか海に入っていた父が抱え込み、砂浜へと運んだ。
前西原少女5歳、混乱と安堵と、少しの怒りと共に帰還。
泣きじゃくる娘に父は言った。
「ほらー!大丈夫だったでしょー!!」
どこがだ。
忘れられない、父との夏の思い出…
とんでもねぇな。笑
今思えばトラウマになってもおかしくない出来事だけど、その後も水を怖がったりすることなく、無事に嬉々として桟橋から海に飛び込むたくまし女子に変貌しました。
あの時は、突然海に投げ込まれるという状況に不安や恐怖が勝っていただけで、やはり子供ながらに「父がいれば大丈夫」という絶対的な信頼が根底にあったのだろう。
それって結構すごい事なんじゃないのか前西原父よ。
全然締まらない。
夏の海エピソード、おわり。